ナレッジ

第三者管理者方式
1.第三者管理者方式とは
法人ではない管理組合は、管理者を選任することができ(区分所有法25条)、選任された管理者は実質的に区分所有者を代表することができます(区分所有法26条)。
管理者は区分所有者の中から選任されるのが一般的ですが、区分所有者以外の第三者(外部専門家)を管理者として選任する「第三者管理者方式」も認められています。
標準管理規約(単棟型「別添1」)では外部の専門家が管理組合の運営に携わる際の基本的なパターンとして下記の三つを想定しています。
【第三者管理者方式】
①理事・監事外部専門家型 又は理事長外部専門家型 | ②外部管理者理事会監督型 | ③外部管理者総会監督型 |
・理事会有り |
・理事会無し(総会のみ) |
|
・管理者=理事長 |
・管理者≠理事長 |
・理事長がいない |
・外部専門家は「役員」(理 事(理事長=管理者を含む)又は監事)に就任(理事長の場合=第三者管理者方式) |
・外部専門家は役員ではない |
|
・運営面の不全の改善 |
・高い専門性と透明性、区分所有者の利益の保護や最大化のニーズの高いマンション(大規模な新築マンションなどを中心に想定) |
・高い専門性と透明性、区分所有者の利益の保護や最大化のニーズが高いが、規模の小さいマンション |
監査との関連でいえば、「②外部管理者理事会監督型」及び「③外部管理者総会監督型」については、【規約の整備等の考え方】として「派遣元団体等による報告徴収や監査(適任者への交替も含む)又は外部監査(別の専門家の一時派遣等)の義務付けについて規定することも考えられる。」とし、特に「③外部管理者総会監督型」については、【考え方】の中で「監査法人等の外部監査を義務付ける」としてこれを図示しています。
【外部管理者総会監督型】
2.管理者管理方式
外部管理者総会監督型において管理者として就任する第三者には、実務上大きく二つのケースがあります。
一つは、マンション管理士等の外部専門家が管理者として就任するケースです。これは、マンションの高齢化に伴って、理事長の担い手確保に苦慮しているうえに、修繕積立金の値上げや滞納の回収が必要といった課題を抱えるようなマンションのケースです。この背景には管理不全マンションという住宅政策上の重要な課題があります。
もう一つは、管理会社や施工事業主が管理者として就任するケースです。これは、従前より投資用マンションやリゾートマンションなど、常時居住している区分所有者が少ないマンションでは一般的でしたが、最近では富裕層向けマンションやシニア向けマンションなどでも導入されるケースが見受けられます。この背景には、区分所有者が外国人を含む富裕層に限定され、時間的・地理的制約もあり、理事会の運営が非常に難しい一方で、「管理者報酬」というコストに対して「管理からの解放」というベネフィットのほうが大きいと考える区分所有者が大多数という実情があるものと考えられます。
実務では、後者のケース、すなわち管理会社や施工事業主が管理者として就任する外部管理者総会監督型の管理方式を「管理者管理方式」と呼ぶことが多いです。
3.管理者管理方式の課題
管理者管理方式には区分所有者の負担軽減という大きなメリットがある一方で、下記のような特有の課題が存在します。
①外部管理者に対する監視・監督
外部管理者を選任する場合には、その者が期待された能力等を発揮して管理の適正化、財産的価値の最大化を実現しているか監視・監督する仕組みが必要です。一般的な管理組合では、業務執行の監視・監督機関としての機能を、理事会及び監事が担っていますが(標準管理規約(単棟型)第51条第2項及び第41条)、理事会がない管理者管理方式では、理事会に代わって、外部管理者を機動的に監視・監督する体制をいかに構築するかが重要な課題になります。
-
②外部管理者による利益相反取引
管理者は、マンションの資産価値の保全に努めなければならず、管理組合の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図ることがあってはなりません。外部管理者と管理組合の利益相反取引に該当するものとしては、管理者が特別な利害関係を有する業者に工事・物品等を管理組合に不利な価格で発注し、発注先からリベートを授受するなどの取引が挙げられます。とりわけ管理者管理方式では、管理会社が自己に、或いは施工事業主がグループ会社の管理会社に、委託管理業務を発注することが必然的に常態化するため、利益相反取引の透明性をいかに確保するかが特に重要な課題となります。
これらの課題に適切に対処するためには、外部管理者自身の内部統制を整備・運用するとともに、管理組合のガバナンスを強化する必要があります。