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マンション管理組合の会計基準収支計算書と資金の範囲

執筆者

深野 一朗

深野一朗

公認会計士・税理士

河野 幸久

河野 幸久

マンション管理士・公認会計士・税理士
宅地建物取引士

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注解

(注2)収支及び資金の範囲

管理組合の活動状況を明らかにするための収支は、資金の増加を収入とし、資金の減少を支出として計算される。資金の範囲は○○○○とする。

実質的な違いは「資金の範囲」

前述のとおり、Aタイプ(企業会計型)とBタイプ(公益法人会計型)の相違点は、形式的には利用する計算書類の体系にあるのですが、実質的には収支計算書の「資金の範囲」に集約されます。
すなわち、Aタイプは収支計算書の資金の範囲が広く、そのため、ほとんどすべての正味財産の増減(企業会計でいうところの「期間損益(=純資産の増減)」)を収支計算書に反映するのに対し、Bタイプは収支計算書の資金の範囲が狭く、そのためキャッシュ・フローのみが収支計算書に反映されることになるため、別途、正味財産増減計算書が必要とされるのです。
なお、Aタイプ(企業会計型)の計算書類体系であっても、資金の範囲を狭くしているケースがあります。この場合には、資金の範囲外の取引を直接貸借対照表に計上するために「×××見返正味財産」という特殊な勘定科目を使用することになります。

「資金の範囲」の意義

資金の範囲については、あまりなじみがないと思われますので、以下に設例により、「資金の範囲」の意義を解説します。

(設例)
当年度内に作業が完了した10万円の保守料が年度末時点で未払となっている場合

企業会計における仕訳は以下のとおりです。
(借方)保守料(PL ※1) 10万円 (貸方)未払金(BS ※2) 10万円

※1 PL:損益計算書
※2 BS:貸借対照表

この場合、損益計算書には、保守料が費用として計上され、貸借対照表には未払金が負債として計上されることになります。但し、資金の増減はないので、キャッシュ・フロー計算書には何の影響も生じません。

これと同様の取引がマンション管理組合にあった場合は、以下の仕訳が適切であると解説されることがあります。

(借方)保守料(CS ※3) 10万円 (貸方)未払金(BS) 10万円

※3 CS:収支計算書

しかし、この処理が会計的に正しいのか、誤っているのかは、実は一概には言えません。これが、収支計算書における「資金の範囲」の問題なのです。

収支計算書は、資金の増減を表す計算書類です。この資金の範囲をどう定めるかによって、上記処理の正誤が決まるのです。

もし設例の取引を収支計算書に反映させるのであれば、資金の範囲を、「現金預金」ではなく「現金預金及び未払金(短期金銭債務)」あるいは、さらに広く定義しておく必要があります。
「未払金(短期金銭債務)」が「資金」に該当するからこそ、「資金」の増減取引(貸方=減少取引)として、収支計算書に反映されるのです。

資金の範囲をどう定めるかは、管理組合の会計方針であるため、継続して適用する限り適切な会計処理として認められることとなります。
もちろん資金の範囲を「現金預金」のみとすることも可能です。その場合、Aタイプ(企業会計型)の計算書類体系では、以下の処理になります。

(借方)未払金見返正味財産(BS) 10万円 (貸方)未払金(BS) 10万円

ここでは「未払金」が資金の範囲に含まれないため、収支計算書には何も記載されないことになります。一方、貸借対照表に未払金を計上するために、「未払金見返正味財産」(貸借対照表:正味財産の部)という、企業会計にはない特殊な勘定科目が使用されることになります。
「×××見返正味財産」は、資金の範囲に含まれない資産及び負債を貸借対照表に計上する場合に必要になります。この科目が生じるのを避けたいのであれば、資金の範囲を広げなければなりません。資金の範囲を「すべての資産及び負債」とすれば、「×××見返正味財産」が生じることはありません。Aタイプ(企業会計型)の計算書類体系を採用している管理会社の多くは、収支計算書の資金の範囲が「すべての資産及び負債」となっています。

なお、Bタイプ(公益法人会計型)の場合には、正味財産増減計算書が作成されますので以下のような処理になります。

(借方)未払金の増加(正味財産増減計算書)10万円 (貸方)未払金(BS) 10万円

では、資金の範囲の相違により計算書類がどのように異なるのか見てみましょう(以下はAタイプ(企業会計型)の計算書類体系を前提とします)。

資金の範囲が「現金預金+短期金銭債権債務」の場合と「現金預金」の場合を比較すると、収支計算書及び貸借対照表は以下のようになります(前提として、期首には300万円の現金預金があり、当年度に設例以外の取引がないものとします)。

資金の範囲:現金預金+短期金銭債権債務 / 資金の範囲:現金預金

資金の範囲

これらの相違は、資金の範囲だけです。いずれの処理であっても適正な会計処理であることに留意しなければなりません。

次に、資金の範囲を長期項目まで拡げた場合について説明しましょう。

積立マンション総合保険

(設例)保険期間は5年。支払保険料は積立部分が260万円、火災保険及び特約部分(掛捨部分)が40万円。満期返戻金が280万円。

積立マンション総合保険

留意点

  • 目的に応じて一般会計か特別会計か区分する必要があります。
  • 保険積立金や長期前払保険料をBSに資産計上する考え方については、「5.管理組合会計の目的と計上すべき資産」を御参照下さい。(以下同様)

マンション修繕積立債券

(設例)利付10年債。1口50万円を10口購入。

マンション修繕積立債券

留意点

  • 利息の処理は省略しています。

共用部分のリフォームに関する融資

(設例)借入期間10年間。固定金利。5百万円借入。

共用部分のリフォームに関する融資

留意点

  • 利息の処理は省略しています。

以上より、資金の範囲を拡げれば拡げるほど、管理組合会計における収支計算書は、企業会計における損益計算書に近づいていくことがお分かりいただけるはずです。

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