第1 総則
2. 一般原則
管理組合は、次に掲げる原則に従って、計算書類(収支計算書及び貸借対照表をいう。以下同じ。)を作成しなければならない。(注1)
管理組合の計算書類の現状
マンション管理組合の会計実務では、管理会社毎に様々な計算書類が利用されますが、大別すると、以下の2つの区分に分類されます。
Aタイプ(企業会計型) | Bタイプ(旧公益法人会計型) | |
正味財産の増減 | 収支計算書(資金以外の正味財産の増減は貸借対照表に直接計上) | 正味財産増減計算書 |
財政状態 | 貸借対照表 | 貸借対照表 |
資金の増減 | (収支計算書) | 収支計算書 |
正味財産の増減」とは企業会計でいうところの「期間損益(=純資産の増減)」に近似し、「資金の増減」は「キャッシュ・フロー」に近似するものです。
Aタイプ(企業会計型)、Bタイプ(旧公益法人会計型)ともに実務慣行として定着していますので、「一般に公正妥当なマンション管理組合の会計基準」を制定する場合には、これらを包含できるような基準にする必要があるでしょう。
AタイプとBタイプに大きな違いはない
では、両者にはどのような相違点があるのでしょうか?
実は、実務において両者の実態に大差はありません。
Aタイプの収支計算書は、資金の範囲を広くすること(「4.収支計算書と資金の範囲」参照)で、正味財産の増減(企業会計でいうところの「期間損益(=純資産の増減)」)を表す計算書類として利用されているケースが多く、それはBタイプの正味財産増減計算書と同様の役割を果たしているのです。
すなわち、Aタイプの収支計算書 ≒ Bタイプの正味財産増減計算書となっているのです。
計算書類の体系は必要性に応じて
そうなりますと両タイプの主な相違点は、Aタイプに、Bタイプの収支計算書(キャッシュ・フローを示すもの)がないという点になります。
しかし、Aタイプの計算書類を利用している管理組合にとって、Bタイプの収支計算書がないことは実務上ほとんど問題視されていないようです。これは、マンション管理組合の取引が単純であるため、報告形式の体系が大きな問題にはならないことを示しています。
マンション管理組合の計算書類の作成目的は、原則として区分所有者が、共用部分の維持管理のために拠出した管理費及び修繕積立金の収支及び財産の状況を適正に把握することにあるのですから、この目的が果たせる限り、報告形式にそれほど強く拘る必要はないはずです。
実務慣行として2つのタイプが定着している以上、そしてそれぞれが公正妥当と認められる以上、それらを1つにまとめる必要性は乏しいと思われます。もちろん、外部の利害関係者(中古マンションの購入予定者等)が利用することを勘案すると、統一した基準があった方が望ましいのですが、両者の相違点は、収支の報告体系という差異に過ぎませんので、計算書類の体系については、各組合がその必要性に応じて判断すれば良いことと思われます。
なお、企業会計と旧公益法人会計(平成16年の改正前後)、労働組合会計における計算書類の体系を比較すると以下のようになります。
計算書類の体系
企業会計 | 旧公益法人会計(改正後) | 公益法人会計(改正前) | 労働組合会計 | |
期間損益又は正味財産の増減 | 損益計算書 | 正味財産増減計算書 | 正味財産増減計算書 | 収支計算書(資金以外の正味財産の増減は貸借対照表に直接計上) |
財政状態 | 貸借対照表 | 貸借対照表 | 貸借対照表 | 貸借対照表 |
資金の増減 | キャッシュ・フロー計算書(上場企業等のみ) | キャッシュ・フロー計算書(大規模法人のみ) | 収支計算書 | 収支計算書 |
マンション管理組合の会計実務は、改正前の旧公益法人会計基準又は労働組合会計基準に類似していると考えられますので、「一般に公正妥当と認められるマンション管理組合の会計基準」を策定する場合には、これらの基準を参考にすべきでしょう。
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