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マンション管理組合の会計監査会計監査の現状と問題点

執筆者

深野 一朗

深野一朗

公認会計士・税理士

河野 幸久

河野 幸久

マンション管理士・公認会計士・税理士
宅地建物取引士

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会計監査の現状

マンション管理組合では、組合員から選ばれた役員が監査を実施しています。これには、理事の業務執行状況を監査する「業務監査」と、決算書が適正に作成されているかを監査する「会計監査」とが含まれます。
日本の管理組合の大半は管理会社に管理を委託しているため、以下の図のように管理会社が作成した決算書(収支計算書、貸借対照表等)を監事が監査し、監査報告書に署名・捺印したうえで、組合総会で承認を受けることになっています。

マンション管理組合の会計監査の現状

昨今はマンションの大規模化にともない、管理組合の経済規模は、非常に大きなものとなっています。数百戸の規模ともなれば、年間の管理費は億を超え、修繕積立金は毎年、数億ずつ積み上がっていくことも珍しくありません。
ところが、マンション管理組合では依然として組織の構成員自身による監査が実施されています。
本来は、経済実態に応じて会計監査のしくみも変えていくべきですが、「私的財産の管理方法は管理組合自身で決定すべき」との考え方が長く続いているため、何十億円もの財産が記録された計算書類(決算書)を持ち回りの監事が監査するという事態が生じてしまっています。
会計監査の専門家ではない、輪番制で選ばれた監事が、自身の貴重な時間を費やし、かつ、自身の責任を持って、こうした巨額の計算書類(決算書)に監査意見を表明することにどれだけの実効性があるのでしょう。
多くの場合、持ち回りの監事による監査は形骸化し、決算書の信頼性は、管理会社のブランドに依拠する以外にないのが現実です。

経済実態と会計監査のしくみ

以下の表のとおり、マンション管理組合は、SPV(任意組合型)と同様の経済実態を有するにもかかわらず、なぜか会計監査のしくみだけは、PTAや町内会と同じになってしまっています。

様々な組織の経済実態と会計監査のしくみ

  PTA・町内会 管理組合
(全部委託)
投資ファンド
(任意組合型)
株式会社
(大会社)
取引規模
(年間取引額)
数万円~数百万円 数千万円~数億円 数千万円~数億円 数億~
財産規模
(純資産)
数万円~数百万円 数千万円~数十億円 数千万円~数十億円 資本金5億円以上
取引の内容 単純 単純 単純 複雑
出納業務(お金
の出入)実施者
会計担当理事 管理会社に委託 GP(ファンド運営会社)に委託 経営者に委託
記帳業務(会計
処理)実施者
会計担当理事 管理会社に委託 GP(ファンド運営会社)に委託 経営者に委託
出納・記帳実施
者の経理能力
普通 高い 高い 高い
会計監査の性格 任意監査 任意監査 任意監査 法定監査
会計監査実施者 監事 監事 公認会計士又は監査法人 監査役及び公認会計士
又は監査法人
会計監査実施者
の能力
普通 普通 高い 高い
業務受託者の責任 該当なし 損害賠償責任あり 損害賠償責任あり 損害賠償責任あり
業務受託者の
損害賠償能力
該当なし 一般に高い 一般に高い 普通

管理組合で動く金額は、とても個人が責任を負えるレベルのものではありません。
管理会社側に起因する問題であれば、最終的に管理会社が補償してくれるかもしれませんが、監査意見を表明した個人の責任が問われない保証はどこにもないのです。
監査意見を表明する責任は、同様の経済規模を有するSPVと何ら変わらないはずです。それならば、会計監査のしくみも同様のしくみとすべきです。
SPVの場合は、一般に、GP(ファンド運営会社)と組合員との契約書の中で、「GPは公認会計士又は監査法人の監査報告書を入手したうえで、決算書を組合員に提出する」ことが決められています。
SPVが外部監査を導入している理由は、決してGPに対する不信感などからではありません。組合員自ら手間をかけ、素人が監査意見を表明するリスクを踏まえ、より経済合理性のある方法を選択しているだけのことです。要はコスト・パフォーマンスの問題です。
マンション管理組合も、管理委託契約書に「管理会社は公認会計士又は監査法人の監査報告書を入手したうえで、決算書を組合員に提出する」と定めればよいのです。
そもそも、マンション管理組合の組合員は、管理に煩わされたくないから、管理委託費を払って管理会社に業務を委託しているのです。僅かなコストで済むならば会計監査も専門家に任せたいと考えるのは当然ではないでしょうか。

外部監査が行われてこなかった理由

では、これまでなぜマンション管理組合の外部監査が実施されてこなかったのでしょうか?
良識ある組合員や監事経験者が、外部の専門家による会計監査の必要性を認識したとしても、導入までのハードルは相当に高いのが現実です。
管理組合の役員は、外部監査を誰に頼むべきか、また、費用はどのくらいかかるかを調査し、理事会での承認を得なければなりません。
外部監査の導入が、組合としては本来合理的であったとしても、もし監査費用分だけ管理費を値上げせざるを得ない場合、感情的に反対する組合員も少なくないでしょう。(実際は既に予算承認を得ている予備費の範囲内で導入できるケースがほとんどですが。)
このように、しくみを変えるのには、相当の手間がかかるのです。
そうした苦労をあえてするよりも、1年だけ辛抱して、役員の任期満了を待とうと考えるのが自然かもしれません。

すなわち、「組合活動に手間隙をかけたくない」という組合員が大多数を占める管理組合では、合理的な意思決定さえ容易にできないのです。相当に強烈なリーダーシップを持った役員でない限り、従来のしくみを変えることはできないのです。これがマンション管理組合の問題の本質といえましょう。会計監査に限らず、マンション管理組合の問題の多くの原因はここにあります。
従来のしくみを変えるのが困難であるなら、最初のしくみづくりの段階で外部監査を導入しておくのがもっとも有効です。すなわち、マンションの分譲段階で、管理規約や管理委託契約書に、外部監査のしくみを導入していくのがもっとも有効なように思われます。

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